切絵作家の美意識

切り絵作家の活動、美意識等を書いていきます。

【Art Fair TOKYO】ロンドンで出会った能條雅由さんの銀箔作品との再会

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ART FAIR TOKYOへ。

現代美術、時々古美術。

 

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会場エントランスにあった鈴木理策さんの桜の作品は、よく見ると、これだけ光があたっていても、特殊な額のアクリル面には反射光がありません。額を含む作品全体では170万円程ということですが、とにかく額にこだわり、額だけでも32万円程なのだとか。

 

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フェアでは、岡本太郎から若手まで様々でした。
特に特徴的で秀逸だった作家さんについて、少し。

 

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遠目で見ると切り絵なのかな?と思って近づいていった山本基さんの作品は、よくみるとアクリル画でした。真っ白な線のみで爽やかで綺麗。アクリル以外でも、この珊瑚のような模様を、塩で描くこともあるのだとか。床一面に塩で描いた模様を見せて頂きました。

 

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国松希根太さんの作品は、岩絵具なのかな?と思って近づいていったら、これもまたアクリルでした。同じ画材でこんなにも色の出方が違うのかーと思いつつ、北海道の国松さんの作品は特に秀逸で、雪で作品を描くのだとか。雪を描くのではなく、「雪で」描くのです。冬の時期にしか作成出来ないこの不思議な技法は、色を載せて、雪降る大地に仕上がりの行方を委ね、自然がその作品に息を吹き込むのです。何万年も前から、人は自然と共にあることをそのまま感じ取ることの出来る作品でした。

 

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今回Art Fair TOKYOで一番嬉しかったのは、ロンドンのDJ Malat Galleryに行った時に画面一面の銀箔に圧倒された作品の作家さんの展示があったことでした。その時の記憶が蘇った、林の風景のモチーフが特徴の能條雅由さんの作品。たまたま、再びここで出会えて改めて圧倒されました。

 

銀はそもそも酸化しやすく、貴金属であれば磨く等してまた輝き画戻りますが、銀箔で仕上げた面というのは、擦って磨く等が出来ません。私がKIRIEBIJOUを始めた初期の頃は銀箔を使った事もあるのですが、1年もすれば変色して来てしまう。それもまた味わい深くもあるのですが、百貨店での商品となると、変色することが前提のものはちょっと店頭に出しづらい。そこでプラチナ箔仕上げに絞っていまに至るのですが、プラチナ箔と銀箔の輝き方は全然違います。

 

とてもはっきりと輝くプラチナ箔に対して、銀箔は淡く優しく輝きます。見比べてみるとたしかにプラチナ箔の方がジュエリー向きではあるけど、銀箔の儚く柔らかく輝く感じとは違います。特にアート作品となると、やっぱり、銀箔の方が美しい・・・!

 

能條さんも、はじめから銀箔で作品を仕上げるのに上手く行っていたわけではなく、銀箔酸化との闘いの末、アルミを薄く塗った上に酸化防止をする等して、独自で色褪せない仕上げ方を編み出したのだとか。

 

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他にも数えきれない程胸に刺さる作品の数々は、作家の技法のこだわり、人生の軌跡、ある種の覚悟、色々なものが織り混ざって作品として形取られていました。