Amazon Primeで出てきたので、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」を観た時の気軽さで何げなく観始めたのですが、ブラック企業に務める若者の悩みの質も、企業の課題の打ち出し方も全然違い、見応えがありました。
何より、有名人の死を通して、現代社会が抱える見えない何かを直視させられるようなニュースが増える中、自ら命をたとうとする人が、奇跡的に寄り添う人が側にいたならどうだっただろうか、ということを、この映画で疑似的に見せてくれているような気がします。
「ちょっと今から仕事やめてくる」あらすじ
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。
なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、彼の事を調べていくうちに、意外な真実を知る事になる。
スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。(Wikipediaより引用)
主人公の隆はとても真面目な性格で、企業が持つ理不尽さに対しても、素直に受け止め過ぎてしまいます。また、その真面目さから、環境を変えたり、時には逃げ道を作ったっていいんだ、ということが見えず、自分の発想だけでは、気分を変えたり、転職を考えたりすることがなかなかできません。
隆だけではなかなか振り切れないいろいろなことを、映画冒頭で出会う「ヤマモト」が、少しづつその殻を破っていってくれます。彼に心を開き、一度は気分を回復させていくも、社内での課題が次から次と降りかかっていきます。そんな中で、どうやって隆は立ち直っていくのか、というのも見所ですし、ヤマモトの正体や、真の想いを知った時、この映画の本当の深さに触れることができます。
とてもいい映画でした。
今、このタイミングで観る価値のある映画だと思います。
近年の自殺者数のグラフは、こちらでよくわかるように、平成10年〜23年頃までの一番多い時よりはだいぶ減ってきているとはいえ、男性が圧倒的に多く、G7の中でも未だに日本はワーストです。こちらの記事では、長年、10代〜30代の若い世代の死因の1位が自殺であるという事実も浮き彫りになってきます。特にコロナ禍の波乱が、じわじわと精神を深刻に蝕んでいく可能性も懸念されています。
まだ若く、これからという時に、「ヤマモト」のような人が現れてお節介を焼いてくれたとしたら、この若い人たちは死なずにすんだのかな、と思うと、とても悲しい気分になります。
通常の生活の中では、映画のように、「ヤマモト」のような人に奇跡的に出会えることってなかなかありません。
でも、幸せも不幸せも、考え方一つで変わってくることは確か。
例え環境を変えることができない状況だったとしても、少し視点を変えるだけで、幸せに感じられることを見つけることだってできます。
だからもし、今、光をなかなか見つけられずにいる人がいたら、少しでも、考え方を変えられるような練習をしてみたり、視点をほんのちょっとずらしてみたり、この映画をみながら、「ヤマモト」の言葉に耳を傾けてみてください。
たまには、逃げたっていいんです。
死ぬ気になって生きてさえいれば、明けない夜はない。
■「ながら観映画観賞」では、切り絵作家タンタンが、切り絵をしながら、ブログを書きながら、事務作業をこなしながら、色々やり「ながら」感情を動かされた映画のちょっとした感想を書き綴っています。