切絵作家の美意識

切り絵作家の活動、美意識等を書いていきます。

風、砂漠、そして空。不屈の名作「風の谷のナウシカ」

風の谷のナウシカ」の劇場での臨場感!

そして、漫画のさらに壮大なスケールの世界を、最後まで読んだこと、ありますか?

 

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風の谷のナウシカ劇場版、六本木シネマズにて

 

6月末より、ジブリの4つの名作が公開されていますね。

風の谷のナウシカ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ゲド戦記」・・・どれも不屈の名作です。中でも「風の谷のナウシカ」は名作中の名作ですが、若い世代でも見たことのある人は多いですよね。

  

 

ジブリの描くアニメーション世界は、ナウシカから始まっています。その後の作品の石杖となる世界観が詰まった世界、一度は劇場で見てみたいですよね。

 

 

 

ジブリアニメーションでは、「風の谷のナウシカ」以外でも、「天空の城ラピュタ」や、「紅の豚」、「魔女の宅急便」、「風立ちぬ」等、しばしば、物語の世界観に「空」が出てきます。(ジブリになるもっと前、「未来少年コナン」でも、空でのとんでもなやりとりがよく出てきましたね!)

 

これは、宮崎駿さんの実家が「宮崎航空興学」という、飛行機の部品を作る工場であったことや、貴族でありながら空に憧れ空に消えた、サンテクジュペリの「人間の土地」に大きな影響を受けていたこともあります。

 

スタジオジブリの名前の由来も、「星の王子さま」で有名なサンテクジュペリが何度も遭難し、死の縁を彷徨ったサハラ砂漠に吹く「熱風」(ghibli)に由来しています。それだけ、宮崎駿さんの中で、「空」「飛空するもの」は、世界観を作っていくのに重要なんですね。

 

2005年に、徳間書店傘下だったジブリ独立の際に、ジブリの名称を買い取らなければならなかったとき、買取に対して消極的だった宮崎駿さんは、「シロッコ」という、サハラ砂漠に吹く「風」に由来する名称を代わりの社名として考えていたそうです。(wikipedia スタジオジブリ参考)

 

風と砂漠と空は、サンテクジュペリの生き様を象徴するイメージですが、その全てのイメージがギュッと詰まっているのがナウシカの世界。ナウシカの世界では、「火の七日間」という、世界最終戦争後の荒廃した世界を舞台に物語が繰り広げられるのですが、これは、戦後敗戦した日本と、核戦争で荒廃した世界とのイメージを重ねています。

 

ただ、砂漠の過酷なイメージをナウシカの世界にも被せているのですが、ナウシカの世界の砂漠は、砂ではなく、全部セラミックだそうな。鉄も銅も、使えそうな資源という資源は何もかもなくなって、セラミックの砂漠と酸の海だけが残された世界という凄まじい世界で繰り広げられる物語。

 

風の谷のナウシカが制作された時代は、「AKIRA」や「宇宙戦艦ヤマト」、「地球へ」等、大きな戦争で荒廃した世界観をを描いた名作マンガ・アニメがとても多い時代。その中でも、ナウシカは今の若い人たちにとってもいまだに色あせることなく愛され続けています。

 

ナウシカを劇場で見るべき点としては、やっぱり、その壮大なスケールの世界観と、躍動感あふれる空のシーン。アニメーションとしては、細部まで行き渡った丁寧な描写が、映画館で、一生忘れないインパクトとして残り続けるでしょう。

 

宮崎駿さんのアニメーションでは、髪の毛やスカートが風になびくシーンがしばしば出てきますが、この、髪の毛をちょっとなびかせる、スカートがちょっとひらっとする様子というのは、全体にそれを導入しようとすると、それだけで作業として1〜2年も違ってくるのだそうです。

 

でも、そうしたちょっとした「風を感じる」「空気の流れや登場人物の感情がそれだけでわかる」ような情景というのは、駿さんにとって、作品を作る上ではなくてはならない大切な要素なんですね。

 

ですので、ナウシカを、テレビで見たことがある、という人は多いと思うのですが、芸術とも言えるその世界観と躍動感、是非、劇場で見てみてくださいね。6月28日〜劇場によりまちまちですが、大体2週間〜1ヶ月は上映されているようです。

 

 

また、ナウシカといえば、アニメ版と漫画とで内容が異なることも、知る人ぞ知る点です。映画では、4巻までを集約しているのですが、漫画は7巻まであります。これがまた、映画よりも壮大なスケール!2時間では語り尽くせない、種族や宗教、特殊能力、虫たちやナウシカの意思疎通、先人たちが残した科学への不審等、あらゆる側面から「現代」を切り裂きます。

 

 

風の谷のナウシカ コミック 1-7巻セット

風の谷のナウシカ コミック 1-7巻セット

  • 作者:駿, 宮崎
  • 発売日: 1994/12/01
  • メディア: コミック
 

 

しかも、この漫画、1982年に初めて1話目が発表されてから1984年に映画上映を挟み、全59話が完結する1994年まで、途中休止等を何回も経て、10年以上をかけてようやく完結しています。

 

最後、腐海の謎が溶ける頃には、「えっ!過酷な世界を生きる人間たちの使命や、巨神兵の真の謎ってそんなことだったの!?ていうか、巨神兵そんなこともできるの??」と、全身をつんざくような衝撃が走ります。映画では登場しない「森の人」や「ドルク」の存在や、映画ではただただクールで動じないクシャナの生い立ち等も深い。トルメキアのその後も、深いい。

 

ドルク等の扱う謎の植物のヤバさも、AKIRAの中で哲夫が色々なものと融合してバーン!となっているヤバさを彷彿とさせる感じ。いや。もっとやばいかも。王蟲の使命感あふれる行動には、映画の終焉とは比にならないくらいただただ感動するばかりで、涙がとまりません。本当に、一人の人間からこのスケールが生み出されたの?というくらい壮大な世界で広げた風呂敷を、ちゃんとストンと完結させているところもまたすごい。

 

映画は言わずもがなの名作でしたが、こだわりの強い宮崎駿さんが、漫画でこれだけの世界を展開していて、映画のナウシカで満足するはずがありません。その後の作品で、「紅の豚」までは、子供も楽しめるようなわかりやすい表現をしながら作っているのですが、漫画版ナウシカが完結した3年後の1997年には、「もののけ姫」で、本来やりたい、もっと、綺麗事では済まされない色々な事が渦巻いているんだ!という想いを全開に作っていくのですが、それはまた別のお話・・・・ 

 

 

・・・等々、とにかく、漫画のことについては、語り尽くせばきりがないので、オリエンタルラジオ中田敦彦さんのYoutube大学で、ネタバレ全開でとてもわかりやすくかみくだいて解説されているので、そちらがおすすめ!(この解説、何がすごいって、著作権の許可に厳しいジブリが認めて放送可能になっているところです!あっちゃんすごい!)でも、漫画を読んだことがない人は、是非解説を見る前に読んで欲しいです!

 

 


【風の谷のナウシカ①】宮崎駿監督によるジブリ不朽の名作漫画

 

 


【風の谷のナウシカ②】宮崎駿の予言書!マスクなしでは生きられない世界

 

 

よりディープに風の谷のナウシカの世界を理解したい!という方は、岡田斗司夫さんの解説動画も面白いです。風の谷をブラつく動画も、長いですけど、ナウシカを、思想的な観点からも、どれだけ過酷な世界か、というのも、わかりやすく説明してくれています。

 

いかがでしたか?ナウシカをまだ見たことのない人も、見たことある人も、もっと、ナウシカの深い世界を見てみたい!と思っていただけたら嬉しいです。

 

 

 

「ながら観映画観賞」では、切り絵作家タンタンが、切り絵をしながら、ブログを書きながら、事務作業をこなしながら、色々やり「ながら」感情を動かされた映画のちょっとした感想を書き綴っています。