切り絵で豊かな日常を

切り絵作家タンタンが、日常を豊かにするための切り絵のススメを書き綴ります。百貨店でのPOP UP で知り合ったブランドさんや、KIRIE BIJOUを身につけていただいている凛とした皆様のご紹介等、お洒落さんに届けたい情報も発信中!

国内か、国外か。

去年、ロンドン在住の方が日本に帰国されたと言う事でご紹介頂き、海外でのアートについてをお伺いしました。


ロンドンでは芸術への投資が盛んなようで、投資家が美術品投資等を行うのが盛んなようです。それは、すでに有名な亡くなっている作家のものばかりでなく、まだ無名の作家にも行われる事で、ロンドンの美術市場がいかに進んでいるのかがよくわかるお話を沢山伺うことができました。


日本でも、芸術は少しづつ浸透してきているとはいえ、飛躍的に伸びていくのには限界があります。日本はあくまで島国で、一般家屋のサイズが美術品を壁にかけたりインテリアとしてオブジェを置いたり、というのに限界があり、富裕層や実業家のお屋敷でさえ、海外の富裕層豪邸とは比べ物にならない。そもそものスペースに限りがある中での文化の中に、海外からの、特に大陸からの芸術感覚を持ち込んでも限界があります。だから、美術品投資、っていってもあんまりピンとこない。



勿論全然芸術が発展しない、というわけではない。でも、本当にごく一部に限られているので、若干偏る。流行りによりけりで発展したりしなかったりして、一時的なムードが大きく影響して、本物が埋もれていく、という現象も多々ある。

けれども、日本では芸術が伸びにくいからと言って、決して日本人のクリエイティビティが小さいわけではありません。むしろものすごいポテンシャルと丁寧な腕で、世界に誇れる工芸技術というものが数百年に渡って培われてきています。


生活上でのスペースには限りがあるけれど、その代わりにそのクリエイティビティを着物や食器、扇子、襖、絵巻物等・・・あらゆる生活必需品の中に溶け込ませるような形で工芸、美術品が発展しています。浮世絵でさえ、もとは量産のための俳優のプロマイドだし。

けれどもそれらを完成させるために妥協を許さず、自然界のものを利用して、その性質を知り尽くした上でのさまざまな表現法で最終的に完成する品々は、勤勉な日本人ならではの美のあり方。その美の数々は、19世紀にはヨーロッパ各地で多くの著名な作家の影響となってきています。



巡り合わせだなあと思うのは、日本人が好きなヨーロッパの芸術家というのは、日本の美術に特に影響を受けた人が多いと言うこと。


ミュシャ展はものすごく頻繁に国内で展開されているけれど、ミュシャは特に日本人の感覚ならではのデフォルメ美と、曲線美の表現の美しさに魅せられて、アール・ヌーヴォーの代表的な芸術家として知られているし、クリムトも日本人好みだけれど、彼は浮世絵や、着物等からも影響を受け数々の創作を残しています。その表現法の中には、日本人独特の空間の間の取り方や、ふんだんに金箔があしらわれた渋みのある輝き等、所々に日本の美を思わせるものが多々あります。


日本の美に影響を受けたのは美術家ばかりでなく、ドビュッシーラヴェル、サティ等多くの西洋音楽家が影響を受け、そのインスピレーションを音楽の中に投影させています。


なかでもドビュッシーは多くの日本人に好まれていて、私もドビュッシーの「金色の魚」や、「沈める寺」等が大好きで、そうした曲を元に切り絵作品を作ったことがあるのですが、「金色の魚」は、日本の漆絵である「錦鯉」から影響を受けて作られた曲で、魚が躍動感あふれる動きで、水の中を、水面を、果ては空にまで舞い上がっていくような印象を受けるのですが、そうした一つ一つの描写の中に、日本美術の感性が、ドビュッシーを通して溶け込んでいるのです。





漆絵、「錦鯉」






https://youtu.be/bK1R4ZSjteQ
錦鯉に影響を受けたドビュッシーの、
「金色の魚」








「金色の魚」にインスピレーションが湧いて切った、「魚のうねり」タンタン作。



・・・だから、私たち日本人がミュシャだったり、クリムトだったり、ドビュッシーだったりが好みなのは、その人たちの中にある日本美術の遺伝子を嗅ぎ取ってのこと。

ややヨーロッパコンプレックスなところがある日本人よ、世界に影響を与えうる、本来持てる素晴らしい感性に誇りを持て!ですね。


だから、「日本ではアートは難しい。だからアート展開するなら海外へ」も方向性によっては正しい一方、日本国内では、何が日本人にとっての好みなのかをちゃんと見極めて、日常に溶け込んで行くような形での美の表現をすればいい。

そうこうしているうちに、ちゃんと突き詰めて行きさえすれば、国内でも海外でも成り立って行くようなものが作れるようになるんじゃないかなあ。なんてね。

たまには作家らしく想いをつづってみました。